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観て、聴いて、読んだもの、その他感じたことの所感


by anothersheep
 昨日、早稲田大学文化人類学会での発表が大きな失敗もなく終わり,一息です。
 反応は悪くなかったです。うん、そう思いたい。そもそも、誰もやってないテーマだから、そこまで突っ込みにくいっていうのもあるし・・・どこまで、成功と見たらいいか、それもわからないが、少なくとも早稲田の院生諸氏からはお褒めの言葉をたくさんもらったので、自信にはなりました。ありがとうございました。少し行き詰まっていたけれど、また沸々とやる気が湧いてきました。もう一度、鍛え直します。

 てなわけで、タイです。
 今日から、タイに研修&調査に行ってきます。
 最初、十日間ほどは、第26回タイ国国際研修「タイ国の保健と社会発展」なる研修プログラムに参加します。タイの都市部、農村部における健康問題や公衆衛生状況の調査というわけで、ぼくにとっては新しい分野への挑戦?でございます。cultural anthropology寄りの医療人類学の知識はそこそこ付いてきていると自負しますが、より応用的、開発人類学に近い医療人類学の方法論等はまだまだ勉強不足なので(というか応用的実学は苦手なので)、どうなることやら。
 しかし、タイの人々が恐らく劣悪な衛生環境であろうその場所で、どんな術でもって生き抜いているか、ということを見てきたいと自分なりには思っていたり。
 また、まったく現場状況が予測できないので、フィールドに入って改めて問題意識を持つ事にもなるだろうとも思っています。
 しっかり勉強して、ついでに自分のタイ語もブラッシュアップしてきます。
 「愚直な民族誌を今こそ人類学者は書くべきである」という昨日の和崎先生の言葉を肝に命じて・・・

 そして、後半一週間はバンコクに滞在して、いろんな図書館で文献を漁ってきます。今回は、安宿じゃなくて、ちょっとはマシなホテルに泊まろうかと思っていましたが、国立図書館のご近所に運悪く安宿街があり、はたまた不幸にも良さそうな宿が多いので、マシなホテルはまたしてもお預けです。ここは、カオサンから歩いて20分くらいで、昔よく遊びに行っていたSuan Dusit大学も近いので、ロケーションは結構いいんじゃないかと思っています。ただ、バンコクの繁華街には出にくそうだな。

 しこしこと勉強ばかりしても、面白くないので、ワットポー辺りで坊さんに聞き取りもしようかと思っています。昨日、口頭伝承についてはどう考えていますか?と、絶対必要になってくるよな、と自分でも思いつつ、絶対大変なので避けていた箇所をある先生に突っ込まれたました。それもあって、いっちょ気合い入れてやってみるか、と。

 でもでも、せっせと調査ばかりしててもなんなので、もちろん遊びます。すでに、アポを取り付けた皆様、待っていて下さい。氷入りのビールも待っていて下さい。
 そして、連絡のつかない方も待っていて下さい。お店に飛び込みして、必ず捕まえますから。重要なお話を伝達しなければならないんですよ。君は元気か〜!?

 新しく買ったバックもとてもお気に入りで、学会が終わってすっきりもして、新しい課題も悦ばしくも見えてきて。なにより、半年ぶりのタイだし。もう何回目?まだまだこの腐れ縁は切れなさそうです。
 ぼくは結局、どうしようもなく、自分のタイ化をという行為を通して、自分を見、自分を客観化し、なにがしかの教訓を得て、ひとかけらの希望を見出し、浄化し、覚醒し、獲得し、疲弊し、それでも尚、また自分を取り戻す、ということを何年も繰り返しているのではなかろうか?
 
 ではでは、行ってきます。
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# by anothersheep | 2008-07-27 10:47 | その他

悪ノリ

 象徴的湖のほとりで地球浸食推進連盟のお歴々が、持続可能な開発に関する安逸な免罪符を承認し合っている間、僕はトトロが生まれた森の周辺で、宮崎駿のイデオロギーを毅然とした態度でもって放棄し、大気中にフロンガスをまき散らすことで、僕のとろけそうな頭脳を何とか食い止めていた。
 もしも我々が可能な限りにおいて歴史と真摯に向き合おうとするならば、まずは側に精神安定剤を置いておくべきである。もしも我々が可能な限りにおいて現代と真摯に向き合おうとするならば、まずは側に銃を置かぬことだ。
 つまり、永久に盲目たる中世を後ろ手にしながら、我々は今や神話を失った世界に生息しているのであり、ここでは須く誰もが誰かが思っている以上に狂っているのである。

 と、敢えて、くだらないことを書いてしまった。
 しかし、くだらないことでしか語れない何かがないだろうか?
 ないか。
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# by anothersheep | 2008-07-18 14:34 | その他

どこまでも人間臭く

 前に書いたMUSEの音楽とはまったく異なるパワーを持った音楽。
 MUSEの音楽が(結果的に)我々が世界に触れるその一瞬の衝動を音楽で表現しているのであれば、The Last Shadow Puppetsは世界そのものを音楽という形式によって物語る。非常にそれは音楽の音楽らしい表現といえる。
 我々はその音楽という世界に浸るのだ。そして含まれる。

 いや、そんな音楽の本質論はいらん。
 ごちゃごちゃ言わずに聴くしかないな、これは。

 とにかく反時代的なこのサウンドとムードと歌声と...
 というか言葉を無力化する、言葉で改めて解釈することを(それでも解釈して、伝達したくなるのが人間の性だ)寄せ付けない魔法みたいな音楽。たまらん。

 素晴らしい音楽なら何でもそうだろうけど、まず人を否応なくその物語に巻き込んでしまう。無力化する。ただ、もう好き、というしかない。

 だから、彼らが現代に何故この音を鳴らすのか、とか
 何故、この音が画期的なのか、とかは大して重要じゃない。
 むしろそういうことを語ることでしか、言葉を紡げないような素晴らしき音楽ということ。

 たぶんこのアルバムは恐ろしく人間臭い音楽で埋め尽くされているのだ。
 恐ろしくたわいもない物事を恐ろしく大仰なドラマに仕立ててしまう人間についての音楽なのだ。

 いやはや、アレックス・ターナーは大した奴だ。
 イギリスってのはなんだかんだ言ってこういう逸材をどんどん輩出してくるんだから侮れない。こいつを才能だと決めつけるのは我々聴くものの勝手な思惑かも知れないけど、どうしようもなくそう思うんである。

 MEETING PLACEはすでにしてマスターピースだ。


 Age of the Understatement
The Last Shadow Puppets / / Domino
ISBN : B00151HZA6
スコア選択: ※※※※※
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# by anothersheep | 2008-04-30 01:25 | 音楽

一瞬の音楽

 誰も書かないので書くが、MUSEの音楽は一瞬の音楽だ。それは、瞬間に寄り添う音であり、分断された音のコラージュと言える。
 
 音楽にとって連続性や時間性や、つまりは物語性はかなり重要だ。しかし、MUSEは敢えてその次元で音を鳴らさないロックバンドである。彼らの音はまさに直感の音楽であり、我々が世界と向き合うその瞬間を描く。
 
 ブラックホールとか爆発とか宇宙とか危機とか、マシューが書き綴るそんな言葉からも彼らの音楽が瞬間の音楽であることがわかるだろう。
 
 例え、そこに何かしらの時間性が垣間みられたとしても、それは引き延ばされた一瞬であり、時間を超越した永遠性である。
 マシューが描く世界では絶えず誕生と滅亡が繰り返される。主人公はいつも危機に直面しており、留保も延期もなく闘争に駆られ、消滅と復活を繰り返す。
 我々が生きる世界は結局そのような終わりと始まりが交互にではなく、瞬間的に同時に存在する世界なのだ。
 
 そういった時間が無力化した世界だからこそ絶望があり、希望が意味を持つ。
 最早、意識では捉えることのできないその爆発的な一瞬をギターとベースとドラムの音がかき鳴らすその瞬間に僕らは確かに世界に触れることができる。
 MUSEが鳴らしているのはそんな超音楽的ロックである。

 ということで、MUSEのLIVE CD&DVD『HAARP』は必聴、必見のアイテム。


 
 ハープ(DVD付き)
ミューズ / / Warner Music Japan =music=
ISBN : B001277MBK
スコア選択: ※※※※※
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# by anothersheep | 2008-04-29 21:22 | 音楽

闘争としての読書

 今でもよく覚えている。吉祥寺。ヴィレバン。
 とにかく刺激的な今まで読んだ類ではない何かが欲しかった。よくあることだ。破壊衝動。みたいな。僕は疲れてくると自分を壊したくなる。「壊す」が可能性として持ち得る深刻さ程ではないにしても。
 でもって、手にとったのが佐藤亜紀著「バルタザールの遍歴」だ。壊したいなどと大袈裟なことを言うわりに、そのデストロイはかなり安易な方法論で達成される。すなわち、タイトルに惹かれたから。
 でもって、読んでみて。
 疲れた。そして、唸った。こいつは、面白いと微笑みすらしたかもしれない。
 まず、今まで読んだ小説のどれとも違った。後日それが佐藤亜紀なのだと知ることになるのだが、まずまったく説明をしない。人物の背景や舞台となる場所の説明から時代設定まで。とにかく余計な記述はなく、贅肉はきれいに削げ落とされている。だから、初めてはしんどい。でも、慣れてくるとこれは堪らない。
 「バルタザールの遍歴」はひとつの身体を共有する双子がナチス台頭を前に斜陽のウィーンを舞台に巡る奇妙な冒険譚だ。
 彼女の小説は、猥雑な情報が少ないぶん、読み手の力量がかなり問われる。しかし、逆に言えば、こちらの力量次第で絶品にもなるということ。作者が雄弁過ぎない分、読者は十分な遊び場を用意されている。
 佐藤亜紀は小説を読むということは、作家と読み手の遊技的闘争の場であるという。もしも、この闘争についてこれるなら、どれも似ていて味気のない現代小説や堅苦しくて地味な近代小説では到底味わえないだろう快楽を手にすることができる。
 「バルタザールの遍歴」を読み終えて感じた疲弊はその苦しくも楽しい闘争の後の悦びに他ならない。

 もしも、「バルタザールの遍歴」がお気に召した場合は「天使」「雲雀」を挿み、「ミノタウロス」を読むといい。
 読み終えた後にはきっと胸にいくつかの勲章を手にしているはずだ。

 バルタザールの遍歴 (文春文庫)
佐藤 亜紀 / / 文藝春秋
ISBN : 4167647028
スコア選択: ※※※※



天使
佐藤 亜紀 / / 文芸春秋
ISBN : 4167647036
スコア選択: ※※※※


雲雀 (文春文庫 さ 32-4)
佐藤 亜紀 / / 文藝春秋
ISBN : 4167647044
スコア選択: ※※※※



ミノタウロス
佐藤 亜紀 / / 講談社
ISBN : 4062140586
スコア選択: ※※※※※
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# by anothersheep | 2008-02-12 22:49 | 書物